2014.3. 8 [体験談]
【第十一話】35歳課長 初めての単身赴任物語
第十一話 35歳課長 初めての単身赴任物語
突然、転勤を命じられたサラリーマンの悲哀こもごもストーリー
第十一話 「移動間際のトラブル」
「東京へ行ってくれないか?」
突然、上司から人生初の〝転勤〟を打診されたわたし。
帝都太郎(仮名 食品販売会社 課長 35歳 妻子持ち)
いよいよ単身赴任まであと一か月をきり、だんだんと「単身赴任をする」ということが現実味を帯びてきた。妻や同僚から様々なアドバイスをもらい、大分不安もなくなってきたが、どうやら問題はまだあるようだ...
●生活習慣を変える
「う~ん、あと5分...」
寝ているわたしの上で娘が飛び跳ねるのが毎朝の日課になっているのだが、最近、この光景を妻が苦々しい目で見ているのに気が付いた。
そんなある日...
「どうして起こしてくれないんだよ! 遅刻しちゃうだろ?」
娘も妻も起こしてくれず、寝坊してしまった。会社には間に合う時間だが朝ごはんを食べている時間はなく、わたしはかなり憤慨していた。
「あなたね、もう少ししたら一人で起きなくちゃいけないのよ。少しは自覚している?」
娘の身支度をしながら妻がはっきりと言い放った。
「えっ? いや...その...」
妻の言葉にドキッとさせられ、つい言葉に詰まってしまった。
「会社、遅刻しちゃうよ。とりあえず用意して行ったら。話は夜ね」
「う、うんわかった...」
妻は怒っているわけではなさそうだが、言葉には有無を言わせない雰囲気があった。
「...行ってきます」
「今日は早めに帰ってきてね」
「はい...」
●妻の真意はどこにある?
落ち込んだ顔していたわたしに、同僚は理由を聞き冷たく言い放った。
「悪いっていってもまだ時間はあるし、そんなに急にやらなきゃいけないのかな?」
同僚は妻の意図を汲んでいるようだが、わたしは相変わらずピンときていなかった
「時間があるって言っても、今まで朝は起こしてもらっていたんだろ。一人で起きる習慣なんて1日2日で身に付くもんじゃないぜ」
「まぁ、それはそうだけど...」
「それに食事つき賃貸に入居したって、朝起こしてくれるわけじゃないだろうし、慣れるまでは単身赴任生活はけっこう疲れるもんだ」
考えてみれば、結婚してから自分で起きたのは数えるほどだ。今日も実際に起きることができなかった。
「奥さんだって、おまえがいなくなったらやらなきゃいけないことが増えるし、お互い様じゃないのか」
なんとなくわたしがやっていることといえば、庭の手入れぐらいだが、細かいことをいえば車のガソリンをいれるのはわたしの役目だし、妻がしていないこともありそうだ。
「起きることだけじゃなくて、最近奥さんに言われていることはないか?」
「そういえば...」
最近「出したらすぐに片付ける、脱いだものは洗濯機にすぐにいれる」など子供に言うようなことを言われている気がする。これは単身赴任生活に慣れるために注意してくれているのかもしれない。
「奥さんのほうがよっぽど単身赴任したときのことを考えているんじゃないか」
●少しでも単身赴任生活に慣れる努力をするのが大事
「もしかして、最近口うるさくなったのは、俺が単身赴任をしてから困らないようにするためか?」
いつもより早く家路についたわたしは妻に聞いてみた。
「あら、よく気づいたわね。その通りよ」
「そうか...ありがとう。今日から意識して生活してみるよ」
「目覚まし時計買ったから、これ使ってみて」
こうしてわたしは少しずつではあるが、普段の生活を少しずつ変えていった。やはり朝が辛かったが、妻と娘の協力を得てなんとか慣れることができた。
いよいよあと数日で単身赴任。なにかやり残したことはないだろうか?
もう一度、確認する必要があるだろう。
次回「確認は念入りに」は4月10日更新予定です。お楽しみに。