2013.12. 9 [体験談]
【第八話】35歳課長 初めての単身赴任物語
第八話 35歳課長 初めての単身赴任物語
突然、転勤を命じられたサラリーマンの悲哀こもごもストーリー
第八話「単身赴任中の家族との心のケア」
「東京へ行ってくれないか?」
突然、上司から人生初の〝転勤〟を打診されたわたし。
帝都太郎(仮名 食品販売会社 課長 35歳 妻子持ち)
初めての単身赴任は家族会議の結果、家具・食事付き賃貸のお世話になることが決定。意外にも妻が単身赴任事情に詳しかったため、スムーズに基礎知識を得ることができた。
しかし、同僚から単身赴任中の心のケアの重要性を聞いたわたしは、激しく動揺するのであった...
同僚から「単身赴任中は妻のケアが大事」と聞かされたわたし。
正直、妻はしっかり者だと思っていたので、いざ〝ケア〟と言われてもピンとこない。
「単身赴任中に上手にコミュニケーションをとれる方法はないかな?」
同僚に尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「一昔前だったら電話か手紙だろうけど、今だと「LINE」や「スカイプ」だろうな」
...名前は聞いたことがあるが、アナログ人間であるわたしは使ったことがなかった。
「今だったらパソコンにつなぐWebカメラも安くなっているから、利用しない手はないぞ。せっかくだからこの機会に覚えないと、触らずじまいになるだろう」
なるほど。毛嫌いするのではなく「妻のため子どものため」と思えば「挑戦しよう!」という気にもなる。幸い自分の時間はあるから、勉強してみよう。
「なーに、仕事でパソコンを使っているんだから、すぐに覚えられるよ」
確かに単身赴任は、今までしなかった、やらなかったことを始めるいい機会なのかもしれない。
「でも、こんな時代だからこそアナログも効果があるんだぜ」
「どういうことだ?」
●アナログツールでサプライズを
「さっき『一昔前は手紙や電話』って言ったけど、手紙を貰う機会って少なくなっただろ。だからこそ意味があるんだよ」
今ひとつ同僚の言葉を理解できないわたしに、同僚はこう続けた。
「いいか、手紙とメールの一番の違いは〝手書きかどうか〟だろ。たとえばお前の娘さんから『パパ、ありがとう』なんて言葉をもらっても、それがメールだったらどうだ?」
...言われたこと自体は嬉しいが、確かになにか味気ない気がする。
「やっぱり大事なことは手書きのほうが伝わるんだよ。奥さんや娘さんに手紙を送るだけで『わたしのために』ってなるんだ。これは効果あるぞ」
確かに最近、手紙なんて書いていない。また貰う機会も昔に比べれば確実に減った。
「それともう一つおすすめなのが『電報』だ。誕生日や記念日に電報を打ってみるのもサプライズで喜ばれるぞ」
電報など友人の結婚式に打った以外、記憶にない。どうして電報がサプライズになるのだろう。
「最近の電報はぬいぐるみが付いていたり、いろいろな種類があるんだ。小さい子どもが貰っても嬉しい仕掛けが付いているんだ。インターネットでも申し込めるから、気軽に申し込めるぞ」
なるほど。子どもにとっては電報を貰う機会などそうそうないし、妻だって手紙ではなく電報が自分の元に届いたら驚くだろう。これはいいアイデアだ。
「でもな、一番大事なことは父親の存在を家に置いておくことだな」
●父親の存在を子どもにアピール
「存在を家に置く?」
「まぁそんなに難しい話じゃないけど、単身赴任で家を空けるんだから当然、家族とのコミュニケーションの時間は減
るだろ。いくら連絡を取り合ったって傍にいないとだんだん存在感はなくなっていくもんだ」
「たまに帰ってきても『自分の居場所がない、家族がよそよそしい』なんてことになったらイヤだろ?」
考えただけでもゾッとする話だ。
「たとえば、なにか決めごとをするときはまずは父親に相談する、些細なことでも子どもから父親に報告する、といった簡単なルールを作って〝父親〟の存在を意識させるんだ」
なるほど、今のままだと娘はますます妻にべったりになり、わたしの存在意義がなくなる
ということか。これは早速妻に提案しよう。
「単身赴任をして、子どもとの会話が昔よりも増えたって話もあるからな。『あの人だれ?』なんて言われないように気をつけろよ。
同僚は実にいいアドバイスをくれた。これで単身赴任中の家族とのコミュニケーションもばっちりだ。
「でもな、本当に気をつけなきゃいけないのは、自分自身のメンタルなんだぜ...」
どうやら同僚は、まだわたしに耳が痛いアドバイスをくれるようだった...
次回「自分自身との戦い」は1月10日更新予定です。
お楽しみに。