2013.8. 8 [体験談]
【第四話】35歳課長 初めての単身赴任物語
突然、転勤を命じられたサラリーマンの悲哀こもごもストーリー
第四話 「引っ越し前の手続きとは」
「東京へ行ってくれないか?」
突然、上司から人生初の"転勤"を打診されたわたし、
帝都太郎(仮名 食品販売会社 課長 35歳 妻子持ち)
いろいろ悩んだ末、家具家電、食事つき賃貸に引っ越すことを決め、単身赴任への不安はおおむねなくなった。...はずだったのだが、引っ越しの手続きという、もう一つの難関が待ち受けていたのであった...
「手続きってどんなことするんだっけ?」
「...一から説明するね」
手続きについてなにも知らないわたしに、妻は心底呆れているようだった。
今まで面倒な手続きは妻にまかせていたツケがまわってきたのである。
「まず一番はじめにしなくちゃいけないのが、転出届を出すことね。住民票を移動するでしょ?」
「う、うん」
「...なんか不安だから説明するけど、住むところが変わる際、住民票を移動させなきゃならないの。移動させなくてもいい場合もあるけど、あなたの場合、いつまでの任期かわからないし、後々の手続きが楽になるから移動でいいよね」
要するに、「基本的には移動させたほうがいいってことだけど、ケースバイケース」ということか。
●転出届は14日以内に
「それで、転出届っていうのは、住民票を移動させるために必要な手続きなの。市役所に行って現住所の「転出証明書」を交付してもらって、新しく住むところに提出するってわけ」
「いつまでに提出すればいいんだ?」
「引越しの14日前から引越し後14日以内に出さなきゃいけないんだけど、いい機会だから自分で行ってきてね」
「ええっ? 行ってきてくれよ」
「代理人提出もできるんだけど、委任状を書かなきゃいけないし本人の確認書類も必要になるし、なにより経験のために自分で行ってきなさい!」
「は、はい...」
どうやら妻はこの機会にわたしに独り立ちしてほしいようだ。単身赴任は色々考えさせられるなぁ...
「転出届は「転出証明書」の発行が目的だから、基本的には引越し日までに手続きしなきゃならないの。難しい説明はどうせ忘れちゃうだろうからしないけど、とにかく引っ越しする日が決まったら余裕をもって行ってきてね」
「はーい」
妻の有無を言わせぬ言い方に、素直に頷いておくことにした。
「それと転出証明書は失くさないようにしてね。引っ越しの作業で失くしてしまうケースが多いみたいだから」
●転入届けも14日以内に
「単身赴任先で新しい生活を始めたら、14日以内に市町村役場に届けなくちゃいけないの。転入届けは実際に新住居に住み始めてからでないと受け付けてもらえないから、忘れないで。」
「代わりに行って...」
「だから、委任状が必要になるし、わざわざそれだけのために行かないわよ! いいから自分で行きなさい!」
わずかな希望にすがってみたが「夫独り立ち計画」に変更はないようだ。
「ほかにも国民年金、世帯主、運転免許の変更とか、電気、水道の手続きもやらなくちゃいけないし、やることはいっぱいあるんだからね」
「ほ、本当ですか...」
「やらなくちゃいけないことをリストにして、チェックしていけば忘れることもないし、後でバタバタしなくてよくなるから作ってみれば」
もしかしたら妻は会社で仕事をすれば、わたしより有能な上司になれるのかもしれない。
少なくとも、転勤や単身赴任のことについては社長と平社員並みの差がある。
「とりあえずやらなくちゃいけないことはわかったよ。...もうないよね
「うーん、引っ越し業者選びは家具付き賃貸にするからいいとして...生活品も現地で買ってもらって...」
どうやら大きな山は乗り越えたようだ。祝杯を挙げるべく2本目のビールを冷蔵庫に取りに行ったところ...
「...浮気したら許さないからね」
背後から背筋が凍るような妻の言葉が届いた。
「な、なに言ってるんだよ、するわけないじゃないか!」
「転勤先でのトラブルで一番多いのが浮気なんだって。大丈夫かな~?」
完全な「夫独り立ち計画」はまだまだ完了しなさそうだ...
次回、「単身赴任のトラブルとは」は9月10日更新予定です。
お楽しみに。