2013.6. 5 [体験談]
【第二話】35歳課長 初めての単身赴任物語
突然、転勤を命じられたサラリーマンの悲哀こもごもストーリー
第二話 「おれが一人で生きていけると思っているのか」
「東京へ行ってくれないか?」
突然、上司から人生初の"転勤"を打診されたわたし、
帝都太郎(仮名 食品販売会社 課長 35歳 妻子持ち)
会社からの命令に逆らえるワケもなく、妻に報告するため
全速力で帰宅したわたしに向かって妻は「単身赴任するんでしょ」の一言
こうしてわたしの家族会議は幕を開けたのだった...
「単身赴任って...一人で行けってのか!?」
「だって東京でしょ? 週に一度は帰ってこられるじゃん」
「それはそうだけど...やっぱり家族はいつも傍にいたほうが...」
「家買ったばかりだし、私も仕事辞められないし、里緒(娘4歳)だって保育園移りたくないと思うよ」
確かに家計的に『俺一人で養ってやる!』と声を大にして言えないところがつらいところだ
「里緒、パパと離れて暮らすなんてイヤだろう?」
「えー、ミユキちゃんとサトルくんと離れたくないーそれにママがいれば寂しくないよ」
なんということだろう...最愛の愛娘は4歳にしてすでに父親より友達を選び、さらに母親に懐柔されていたのであった。
「3年ぐらいでしょ。あっという間だよ」
「パパ、行ってらっしゃい」
嗚呼...これが俗にいう勘違いってやつか...どうやらウェットになっていたのはわたしだけで
家族は思った以上にドライだったようだ。
昔より転勤が悲観的でないワケ
じつは以前に比べ、転勤=マイナスのイメージが大分薄れている、というデータ結果があるそうだ。
インターネットの普及や通信・交通手段の発達により、離れていても連絡がとれる、すぐに会えるといったことかららしい。
それはわかる。
しかし、わたしが単身赴任を嫌がる最大の理由は実は家族の問題ではなかった。
「...あのさぁ、俺が家事できると思ってる? 今まで一人暮らしもしたことないんだぞ」
そう、一番の不安材料は"家事をしたことがない"ということだった。
「知ってるよ。いい機会だから自炊してみれば。それにいざっていうときに洗濯もできないようじゃこの先困るでしょ。いまどき家事がいっさいできないなんて恥ずかしいよ」
今日の妻はいつもより弁がたつようだ。なんだか、単にわたしがわがままを言っているだけのように感じるのは気のせいだろうか。
「ちょっと考えさせて...」
力なく言い残し、気持ちを落ち着かせるため、すごすごと風呂へ向かった...
「まず早起きして、朝ごはんを作る、昼は外食でいいとして夜も外食? 食費がかかるな...米ってどうやって炊くんだろう...洗濯もしなくちゃいけない...洗剤はなにを使うべきか、柔軟剤は必要なのか、掃除は週に何回しなくちゃいけないのだろうか...」
焦げた卵焼き、べちょべちょのご飯、異臭を放つ衣類、ほこりまみれの部屋...
独りで生活をすることを考えただけでも恐ろしくなった。母ちゃん、ご飯を作ってくれてありがとう...妻よ、掃除をしてくれてありがとう...
感謝をしつつ、のぼせそうになった頭にもう一つの懸念事項が湧いてきた。
「もしかして家具も全部買わなきゃならないのか?それってえらい出費になるんじゃ...」
そう、単身赴任のもう一つの敵は、家財道具を新たに揃えなければならないことだ。
引っ越し費用や家賃に関しては会社がある程度負担してくれるらしいが、さすがに家財道具までは負担してくれないだろう。
風呂あがりに衝撃の事実 家具付き賃貸の存在を知るわたし
「なぁ、簡単に単身赴任しろって言うけどさ、えらい出費になるんだぞ」
「そんなの言われなくもわかってるよ。でも転勤は出世の第一歩でしょ。長い目で見れば先行投資だよ」
バスタオル一枚のわたしを一瞥し、軽くあしらう我が妻。
「でも新しく家具を購入するって勿体ない話だよなぁ」
「そう思っているんだったら家具付き賃貸にすればいいじゃない」
「家具付き賃貸? もしかしてそれって...」
暗雲立ち込めていたわたしの単身赴任物語に一筋の光明が差したようだ。
次回、いまどきの転勤は手ぶらで!?「どうせならご飯もいかがですか?」は7月15日更新予定です。
お楽しみに。