2014.1. 9 [体験談]
【第九話】35歳課長 初めての単身赴任物語
突然、転勤を命じられたサラリーマンの悲哀こもごもストーリー
第九話 「自分自身との戦い」
「東京へ行ってくれないか?」
突然、上司から人生初の〝転勤〟を打診されたわたし。
帝都太郎(仮名 食品販売会社 課長 35歳 妻子持ち)
同僚から家族へのケアについてレクチャーしてもらったわたし。同僚の意外な造詣に感心しつつ、心のケアの重要性を理解した。しかし、他人のケアより自分自身へのメンタルに気をつけろ、との同僚の言葉に戦々恐々とするのであった...
「自分自身へのケアが大事ってどういうことだ? 確かに、妻にも浮気をするな!って釘を刺されたけど...」
浮気をしたら即離婚、あの妻の言葉にウソはないだろう
「浮気は自分の自制心の問題だろ。まぁ寂しさからっていう理由は、あるかもしれないけれど、問題は自分で気づいていない心の問題なんだぜ」
「お前は食事付き賃貸に住むって言っていたから問題ないかもしれないけれど、単身赴任者が一番寂しさを感じるのが、家に帰って誰もいない部屋でご飯を食べている時なんだそうだ」
確かに想像しただけで寂しい。料理が趣味、となれば楽しさもあるかもしれないが、それでも一人で食べることに変わりはない。
「一人でご飯を食べても味気ないから、テレビを見たりパソコンを触りながらっていうのが多くなるんだが、結局会話がないのが問題なんだな。最初は『寂しいな』ぐらいかもしれないが段々それがストレスになっていくんだ」
なんだかホラー話を聞いているような感じになってきた。
「テレビを見ていて危険サインなのが自分で気づかないうちに、テレビに向かって話しかけているときなんだ。ストレスが溜まっている心のサインだな」
そういえば忙しくて家族の顔を見ていないとき、深夜のテレビ向かってツッコミを入れている時ってあったな。あれは知らず知らずのうちにストレスを溜めていたのか。
「ほかにも単身赴任でストレスを溜めやすいことはこんなところだな」
●気付かないことが一番危ない!
・テレビに向かって話しかけていたとき
・冬、人気のない真っ暗な部屋帰ったとき
・休日の時間を持て余しているとき
・仕事のことが頭から離れないとき
・職場の人間関係で悩んでいるとき
「ざっと挙げたが、仕事は単身赴任をしていなくてもストレスが溜まるだろ。それが誰にも相談できない状況になるんだ。どれだけ心に負担がかかるかわかるだろ?」
確かに当てはまることがいくつかある。わたしは知らず知らずのうちに、ストレスを溜めていたのか。
「でも、仕事でストレスがある程度溜まるのはしょうがないだろ。どうやって発散すればいいんだ?」
「奥さんに言われなかったか? 新たな趣味を持てって。要するに一人でいる時間をいかに上手く楽しむかってことが大事なんだよ」
妻がわたしに言っていた事はこういうことだったのか。まったく恐れ入るばかりだ。
「仕事も大事だけど、職場を離れたら一旦仕事のことは忘れる、ぐらいの心意気でちょうどいいんだよ。月に二度は必ず帰省するようスケジュールを組む、っていうのも仕事のうちだぜ」
なるほど、妻と同僚の言葉は違えど、共通していることは「自分の時間を大切にする」ということだ。
「心に余裕があれば単身赴任もそう悪いものじゃないんだぜ。その土地の食べ物や風習を学ぶのだって楽しいだろ」
同僚から一通りのケアを聞いたわたしは、仕事の引き継ぎを始めた。しかし、実際にやってみると仕事の引き継ぎというのはとても大変なものだった。これはなにか知恵を借りなければならないかもしれない...