2013.11. 7 [体験談]
【第七話】35歳課長 初めての単身赴任物語
突然、転勤を命じられたサラリーマンの悲哀こもごもストーリー
第七話 「単身赴任と心のケア」
「東京へ行ってくれないか?」
突然、上司から人生初の〝転勤〟を打診されたわたし、
帝都太郎(仮名 食品販売会社 課長 35歳 妻子持ち)
初めての単身赴任は家族会議の結果、家具・食事付き賃貸にお世話になることが決定、各手続きも妻に説明してもらった。
そのうえ「生活を楽にする単身赴任グッズ」なるものまで紹介してもらい、これで一安心とその日は眠りについた。だが翌日、会社に向かったわたしは同僚から空恐ろしい事実を聞かされるのであった...
●単身赴任中の浮気に要注意!
「帝都、おまえ転勤だって?」
会社に着くなり同僚が尋ねてきた。
先日、一応ごまかしはしたがもう社内で広まっているのだろう。
「そうなんだよ。家族会議をして一人で行くことに決まったんだ」
「準備とか大丈夫か? おまえ一人暮らししたことあるのか?」
「家具・食事付き賃貸に住むことにしたんだ。妻が色々調べてくれてさ」
昨日の妻はまるで専門家のようだった。主婦は強し、といったところだ。
「そうか、おまえの奥さんしっかりしてるもんな。浮気するなよ」
「まさか、可愛い娘もいるんだぜ。ありえないよ」
「わかってないな...単身赴任中の浮気は一番起こりやすいトラブルなんだぜ」
「...なんだって?」
●なぜ単身赴任中に浮気は起きやすいのか?
同僚の言葉に乱され仕事ははかどらなかった。「このままではいけない」と思い昼食に同僚を誘い事の真相を確かめてみた。
「なぁ、単身赴任中の浮気が起こりやすいってどういうことだ?」
「だって考えてもみろよ。今までは家に帰れば奥さんがいて子どもがいただろ。それが単身赴任中は家に帰っても独りなんだぜ。寂しくなるに決まっているだろ」
確かに、想像しただけで寂しい気分になってきた。
「寂しさからつい...なんてパターンが多いのも頷けるよな。『普段浮気なんてしそうにない』って人ほど、寂しさの反動で浮気に走ってしまうものらしい」
愛妻家ほど離れた時の反動が大きいということか...わたしは大丈夫だろうか?急に不安になってきた。
「一人の時間を楽しむのもストレスをため込まないために重要だけど、気持ちが大きくなりすぎてつい...って話もよく聞くな」
...多少なりとも一人暮らしにワクワクしていた自分がいることに気がついた。確かに急に「自由」を手にしてしまったら、気が緩んでしまうだろう。
「だからおまえが食事付き賃貸に住むって聞いて多少安心したよ。毎日暖かい食事がとれるっていうのは浮気防止に効果があると思うぞ」
もしかして妻はこのことを見越して家具・食事付き賃貸を勧めたのだろうか。だとしたら妻も不安に思っているということか。
「実は、一番気をつけなきゃいけないのは奥さんへのケアなんだぜ」
「どういうことだ?」
「単身赴任をする側は、一人暮らしという楽しみがあるかもしれないけど、留守を任される奥さんの負担は思っているよりも大きいってことだよ」
あの気丈な妻が「寂しい」などと思うのだろうか? そんなわたしの疑問を察知したのか、同僚がこう続けた、
「考えてもみろよ。小さい子どもと一緒に居るっていったって、いざという時に頼れる男手がいないんだぜ。防犯上のこともあるし、不安に思うなってほうが無茶な話だよ」
なるほど。実際に単身赴任をして家を空けるわけだから、家を守るのは妻の役割になる。子どもの世話をして夫の安否を気遣い、家事もして...これは思っていた以上に妻の負担が大きいことに気がついた。
「だからつい優しい言葉をかけられ夫の留守中に...ってパターンも多いんだ。どちらにせよ、離れている分お互い気をつかわなきゃダメってことだよ」
同僚の言葉はわたしの心に深く突き刺さった。今まで妻にはおんぶに抱っこされていたが、一家の大黒柱として気持ちを引き締めていかなければならない。
「単身赴任中に、上手くコミュニケーションをとれる方法はないかな」
同僚は意外に事情に詳しいようだ。なにかいい知恵はと思って聞いてみたところ、これもまた意外に良い情報を教えてくれた。わたしが安心して単身赴任に赴けるには、まだまだ準備が必要なようだ。
次回、「単身赴任中のコミュニケーション」は12月10日更新予定です。
お楽しみに。