2013.9. 9 [体験談]
【第五話】35歳課長 初めての単身赴任物語
突然、転勤を命じられたサラリーマンの悲哀こもごもストーリー
第五話 「単身赴任のトラブルとは」
「東京へ行ってくれないか?」
突然、上司から人生初の"転勤"を打診されたわたし、
帝都太郎(仮名 食品販売会社 課長 35歳 妻子持ち)
家族会議の結果、家具・食事付き賃貸にお世話になることが決定。とりあえず、当面の危機は去り、意気揚々と祝杯をあげようとするわたしに、妻は単身赴任先でのトラブルについて話しだしたのであった...
「単身赴任で一番多いトラブルって浮気なんだって」
「な、なにを言っているんだ...浮気なんてするわけないじゃないか」
2本目のビールを空けようとした瞬間、背中ごしに妻から「浮気」という単語が飛んできて思わず狼狽してしまった。
「言っておくけど浮気したら即離婚だからね」
「ははは...冗談キツイいなぁ」
「冗談でもなんでもなくて、単身赴任先での浮気は、妻ならだれでも心配することなんだからね」
どうやら妻が言うには、今まで真面目に生きてきて、家族のために尽くしてきた男性ほど、浮気してしまうそうだ。
家族と離れて暮らし、寂しさからつい...といった具合に一夜の過ちを犯してしまうとのこと。
確かに、家族と離れて暮らすと人肌恋しくなるだろう。想像しただけで寂しくなってしまった。
「浮気だけじゃないよ。借金をつくる人だっているんだから」
「借金!? なんで?」
●連鎖する単身赴任のトラブル
「単身赴任の寂しさから、飲む機会が増えて毎日のように通っちゃうんだって。スナックの常連にでもなったら、いくらなんでもお金が足りなくなるじゃない」
「そして悪いことに、そのスナックで働く女性といい関係になって、家族にバレてってパターンも多いらしいわよ」
確かに言われてみると、現実的に有りそうな話だ。というかあるだろう。
「それとギャンブルにハマっちゃう人も多いの。まったくやるなとは言わないけど、独り暮らしだから誰も止める人もいないしね。熱くなっちゃう人は要注意ね」
ふーむ、なんとなく自分には無縁の話のようだが、なにせ独り暮らしを今までしたことがない。そんな自分にとって、全て起こる可能性のあるトラブルということか。
お酒はたしなむ程度だが、ギャンブルは基本的にやらないし、行きつけのスナックもない。だが実際、寂しくなったらどうやって気を紛らわせればいいのだろうか。趣味と言える趣味も特にないし...
「いい機会だからジムにでも通えば? そろそろお腹周りも気になるでしょ」
苦悶の表情を浮かべるわたしに、妻は見透かしたようにアドバイスをくれた。ジムか...確かに空いた時間を埋めるにはいいかもしれない。
●いなくなってからわかる家族の大切さ
「ジムに通って、少しでも健康に気をつかったほうがいいわよ。病気で倒れたってすぐには誰も助けてくれないんだから」
くたくたに疲れて帰宅してご飯を作るというのは、考えただけで無理だ。
しかし、どんなに栄養面に気をつけていても、病気にはかかってしまう。職場での流行病などは「かからないように」と祈るしかないぐらいだ。
「そうだな、黙っていても病院に連れてってくれるわけじゃないし、自分が常用している薬は自分しか知らないもんな」
「そうよ、だから規則正しい生活を心がけて、せめて休みの日は掃除しなさいよ。助けてあげられないんだから」
家具・食事付き賃貸に住んだから全てが万全、というわけではない、ということだ。いい大人が恥ずかしい決意だが、自分の身は自分で守る! ということを心に誓った。
「今度の休みに、必要なものを買いに行こうか」
「えっ? 家具付き賃貸だったら全揃っているだろ」
「生活するのが楽になる便利グッズ、あったほうがいいでしょ」
無言でうなずき、ようやく2本目のビールを口にしたとき、少しぬるくなったビールの苦みを、いつもより強く感じた気がする。
単身赴任便利グッズとは、いかなるものなのだろうか?
次回次回、「単身赴任の便利グッズ」は10月10日更新予定です。
お楽しみに。